出版科学研究所が10月31日に発表した2025年上半期(1-6月)の出版市場動向調査によると、電子書籍の売上高が紙書籍を初めて上回ったことが明らかになった。電子書籍の売上高は前年同期比18.2%増の4,850億円に達し、紙書籍の4,720億円を130億円上回った。これは日本の出版業界における歴史的な転換点といえる。電子書籍市場の成長を牽引しているのは、マンガコンテンツの人気とサブスクリプションサービスの普及だ。特に20代から40代の読者層において、スマートフォンでの読書が定着し、通勤時間や隙間時間での利用が増加している。一方、紙書籍市場は前年同期比3.8%減と縮小傾向が続いているが、ハードカバーの高級書籍や実用書、児童書などの分野では安定した需要がある。出版社各社は、紙と電子の両方で展開するハイブリッド戦略を強化。紙書籍購入者に電子版を割引価格で提供するバンドル販売や、電子版先行配信後に紙版を発売する逆転モデルなど、新しいビジネスモデルの実験も進んでいる。また、AI技術を活用した読者の嗜好分析により、パーソナライズされたレコメンデーション機能も向上。読者一人ひとりに最適な作品を提案することで、新規読者の獲得にも成功している。今後は、VR/AR技術を活用した次世代の読書体験や、音声読み上げ機能の高度化など、さらなる技術革新が期待される。
電子書籍市場が紙書籍を初めて上回る、2025年上半期の売上データで判明
- 記事提供
- 朝日新聞
- 公開日
- 2025-10-31
- 元記事URL
- https://www.asahi.com/